「念のため、もう一人に見てもらおう」。大切な仕事だからこそ、そう頼みたくなる場面があります。別の人に見てもらうことを、無駄だと言いたいわけではありません。ただ、何を見てもらいたいのかが曖昧なまま、人数だけを増やしてはいないでしょうか。
たとえば、依頼文をもとに案件一覧を作る場面を考えてみます。ここで挙げるのは説明用の架空の例です。一人目が依頼文と一覧を照合し、二人目も同じ箇所を読み、「大丈夫です」と返す。その確認で安心したのは、転記が合っていることなのか、依頼の意味を取り違えていないことなのか。二つは別の問いです。
01 同じ確認にも、意味はある
転記や計算を別の人がもう一度確かめることには、意味があります。確認の人数や手順が定められている仕事も、その決まりに従う必要があります。ここで考えたいのは、それをやめることではありません。
一致の確認と、意味の確認
同じ「依頼文と一覧」を見る
一致の確認
正しく写っているか
意味の確認
元の情報は十分か
確かめたい問いが違う
必要な複数人確認や、仕事で定められた手順は省きません。
「二人が見た」という言葉だけでは、何が確認できたのかまでは分かりません。依頼文から一覧へ正しく写っていても、依頼文の対象期間が曖昧なら、その曖昧さは一覧にも残ります。転記の確認と、元の情報が十分かという確認は、同じではないからです。
二人目に渡しているのは、
同じ作業か。
それとも、別の問いか。
二人目に渡しているのは、
同じ作業か。
それとも、別の問いか。
02 「ここは確認済み」の外側を見る
先ほどの例なら、「依頼文との一致は確認した。対象期間の読み方がこれでよいかを見てほしい」と頼むことができます。これなら二人目は、何を引き受けるのかを具体的に考えられます。もちろん、依頼文へ戻るための資料と時間も必要です。
確認済みと、次の問いを渡す
元の依頼文も、一緒に渡す
「一致は確認済み。
対象期間を見てほしい」
元の依頼文に戻る資料と時間も必要です。
これは、確認する人を増やす前に、確認の対象を分けてみる提案です。筆者の仮説は、何を確かめたかを区別せずに人数だけを足すと、まだ確認していない点まで確認済みに見えてしまうことがある、というものです。確認済みの印が示す範囲を、頼む側と受ける側で揃えたいと思います。
一方で、確認事項を細かく割り振ればそれで十分、というわけでもありません。担当範囲の外に気になる点を見つけたとき、戻って話せる余地が要ります。役割を分けることと、境界の外を見ないことは別です。
03 人数ではなく、頼み方を確かめる
資料の一致を確かめることと、その内容を専門的に判断し、最終的に承認することも分けておきたい。この記事は、士業の専門判断や、必要な複数人確認を省く提案ではありません。誰がどの責任を担うかは、それぞれの仕事のルールに従います。
照合と、専門判断を分ける
照合
資料の一致を確かめる
専門判断
内容を専門的に判断する
最終承認
最終的に承認する
担当と手順は、仕事のルールに従う
担当範囲の外で気になる点は、戻って話せるようにします。
次に「念のため見てください」と頼むとき。一人目が確かめたことと、まだ確かめてほしいことを分けて伝えてみる。人数を増やすかどうかの前に、その依頼が何を確かめるためのものかを問い直す。確認の意味は、そこから見えやすくなるのではないでしょうか。
この記事について
特定の事務所の実話ではなく、仕事の進め方を考えるためのコラムです。